<FRANK PAHL>

ミシガン州デトロイトで、楽しく狂ったポップ・センスにあふれるチャーミングな音楽を作り続ける奇才。トイ・ピアノ、ギター、バンジョー、ハーモニウム、ユーフォニウム、アコーディオンなど様々な楽器と得意の口笛、おもちゃ、自作の自動演奏装置などを用いて、アメリカ的な哀愁とユーモア、なんともいえない違和感を感じさせる独特の世界を作り上げる。ワンマン・バンドや多重録音を用いたソロ活動と並行して、ポップ・ソング・バンドのオンリー・ア・マザー(87〜98年)、インストゥルメンタル・アンサンブルのスカヴェンジャー・クァルテット(01年〜)を率いている。

リトル・バン・セオリー/LITTLE BANG THEORY
"Elementary"

奇才フランク・パール率いるトイポップ・トリオのドリーミー・ワールド

 フランク・パール、テリー・サリス、ダグ・シミンのトリオ。アコースティック・ギター、トイピアノ、おもちゃの鉄琴、メロディカ、ハンドベル、カズーなどをそれぞれが演奏するおもちゃ合奏団。加えてパールの口笛と三人のコーラスも効果的に用いられている。オンリー・ア・マザー時代のコントロール不能なアクの強さや猥雑さは影をひそめ、ほのぼのとしたドリーミーなトイポップをスマートに作り上げている。『ぼくの伯父さん』や『荒野の七人』、『七人の侍』など、映画音楽の遊び心あふれるカヴァーも織りまぜながら、"Daydream" で幕を開け "Another Daydream" で幕を閉じる夢見心地の50分。推薦盤。08年。

リトル・バン・セオリー/LITTLE BANG THEORY Acidsoxx Musicks 1,995
Elementary '08 xx PR1

スカヴェンジャー・クァルテット/SCAVENGER QUARTET Acidsoxx Musicks 1,995
We Who Live on Land '05 xx 023
アメリカン・アヴァンポップの奇才フランク・パール率いるアコースティック・クァルテット(ギター/バンジョー/キーボード/口笛、ベース、サックス/フルート、ドラムス)の4年ぶりのセカンド・アルバム。変拍子を多用した特有の「ネジ外れた感」はあるものの、気品すら感じさせるスマートなインストゥルメンタル・アンサンブルを聴かせている。ジャズ、クレッツマー、ラグタイム、室内楽、民族音楽と、幅広い要素が盛り込まれている。オンリー・ア・マザーはもちろん、ペンギン・カフェ・オーケストラやランサンブル・レイエ、昔のクリンペライなんかが好きな人にもオススメ。推薦盤。>>試聴する1 >>試聴する2

フランク・パール/FRANK PAHL Acidsoxx Musicks 1,995
Songs of War and Peace '07 XX 031
「星条旗よ永遠に」のアメリカ企業名語呂合わせヴァージョンで幕を開ける反戦コンセプト・アルバム。バンジョーとヴォーカルを中心にほとんどのパートを自身で演奏したフランク・パール流カントリー&ウェスタンに乗せ、時に痛烈に時にアイロニカルに、戦争好きなブッシュ政権を批判する。ブッシュ大統領の演説のサンプリングは、レーガン批判のフレッド・フリス『チープ・アット・ハーフ・ザ・プライス』へのオマージュか。オンリー・ア・マザーやスカヴェンジャー・クァルテットのメンバーの他、ユージン・チャドボーンがゲストで参加。>>試聴する1 >>試聴する2

スカヴェンジャー・クァルテット/SCAVENGER QUARTET Snowdonia 2,467
Whistling for Leftovers '01 SW 025A
ダグ・ゴーレイ(ドラムス)、ジョエル・ピータースン(アコースティック・ベース)、ティム・ホームズ(サックス)をメンバーに迎え、オンリー・ア・マザーの変てこロック魂を受け継いだ、奇妙な味わいの大道芸風チェンバー・アンサンブルを繰り広げる。相変わらず微妙にズレたセンスがたまらない曲者フランク・パールが、得意の口笛を始め、玩具楽器、プリペアド・ピアノ、自然音サンプリング他で繰り広げる、ノスタルジックなトイ・アヴァンポップ。

オンリー・ア・マザー/ONLY A MOTHER T.E.C. Tones 2,467
Feral Chickens '95 TT 95002
洗練の度を増してハズしっぷりにも磨きがかかったオンリー・ア・マザー4年ぶりの5作目。ちんどんパーカッションと脱力室内楽に女性ヴォーカル/男性ヴォーカルが半々。哀愁漂うキッチュなアヴァン・ポップ・アンサンブル。ロウファイと思わせておいて異常に完成度が高い。名盤。

フランク・パール&クリンペライ/FRANK PAHL & KLIMPEREI IN POLY SONS 2,520
Music for Desserts '01 IPS 1001
オンリー・ア・マザーを率いたアメリカのアヴァン=ポップ・アーティストと、リヨンのトイ=ポップ夫婦ユニットのテープ交換による共作アルバム(2001年)。ネジの外れたパールの実験ポップ・センスと無国籍ウェスタン風味が、夢見るクリンペライの無邪気でキュートな純粋おもちゃ世界と絶妙にブレンド。雑音を加え位相をずらすことで深みを増した、たどたどしくも楽しくノスタルジックな極上のアヴァン・トイ・ポップ・サウンド。18の曲名はいずれも美味しそうなデザートの名前。ボナペティ!